「わ、わたし飲み物取ってくるね。紅茶でいい?」


 たった数秒の沈黙に耐えかね一旦部屋の外に出ようとするが、扉に手を掛ける前に控えめなノックが部屋に響いた。


「緋莉、紅茶とお菓子持ってきたわよ。優陽くん、ドーナッツは好き?」


 お母さん、なんかテンション高くない? もしかして、優陽を気に入ってくれたのだろうか。 


「もちろん好きです。ありがとうございます」


 そう言ってにこっと笑みを見せる優陽。浅桜くんのお父さんと話したときのわたしとまるで正反対だ。自分の彼氏ながら、すごいなと感心してしまう。


「そうだ。よかったら夕食も食べていかない?」


 ちょ っ と お 母 さ ん っ ⁉︎


 更なる急展開に首がぐいっとお母さんのほうへ向く。まさか昨日付き合って今日初めて家に来た相手を夕食にまで誘ってしまうとは。お母さんってこんなに積極的だったんだ。ていうか、娘の彼氏に積極的になるお母さんって……。