「あら、庭で声がするから誰かと思えば、お帰りなさい。そちらの彼はお友達?」
「お母さん、ただいま」
家の扉から顔を覗かせているお母さんに、すかさず優陽が頭を下げて挨拶を始める。
「初めまして。緋莉さんとお付き合いをさせて頂いている、浅桜優陽です」
その真剣な口調に、思わず胸がきゅんとする。
お母さんは「まあっ」とうれしそうに両手を頬に当てて、満面の笑みを見せた。
「初めまして優陽くん。緋莉の母です。外寒いでしょう。よかったら上がって」
ちょっとお母さん。初対面でいきなり家に上がれとか言われたら誰でも遠慮するでしょう……と思ったが、優陽はそれに笑顔で応じた。
「ありがとうございます。それじゃあちょっとだけお邪魔します」