翌朝のクリスマス当日。

 目が覚めると嘘のように身体が軽かった。いつもなら目覚ましが鳴って起きるまで十五分はかかるのに。昨夜の出来事が嘘のように気分が清々しい。

 体を起こして机の上に置いてある映画のフライヤーに目をやると、さらに頭が冴えてきた。だけどなにしろ昨日の今日だ。浅桜くんとふたりきりになって、わたしは自然に話せるだろうか。それに、うまく笑えるだろうか。

 今日は大切な日にしたい。できれば昨夜のことなんて忘れてしまいたいけれど、銀髪男性の後ろ姿が瞼の裏に焼きついて離れない。いや、そもそもあの人を忘れるなんてできるわけがないのだろう。

 彼はわたしを助けてくれた。そのせいで酷い暴行を受けた。
 家に帰ってから通報しなかった後悔が、いまさら押し寄せてくる。

 あの人の無事を確認して、いつかきちんとお礼をしたいな……。