「それと、緋莉に関係しているかもしれない部分はここだ」


 優陽が広げたページを覗き込むと、思わずビクッと肩が震えた。


「吸血鬼にとって、処女の血がご馳走だということ!」


 いや、わたしは処女だけど。間違いなく処女だけど。でも、そのわたしを処女と決めつけて話す優陽には、照れとか恥じらいとかそういった感情はないのだろうか。


「あ、もし違ってたらごめん!」


 あっけらかんと聞く優陽の頭を軽くはたく。


「優陽が初めての彼氏だよ!」


 皆渡くんじゃないんだから、もう少しオブラートに包んで話せないの?


「ご、ごめん、ちょっと茶目っ気出してみたんだけど……」


 そういう優陽はどうなんだ? と思うけれど、わたしには恥じらいがちゃんとある。


「あ、ちなみに俺も緋莉が初めての彼女だから」


 ははっと笑いながらそう言う優陽の頭をさらに軽く小突いた。

 でも、わたしはどこかほっとしていたりもする。その気持ちには気づかれちゃいけない。

 こんな話をするために図書室に来たわけじゃない。けれど、こんな話のおかげで心の距離が縮まっていく。