優陽が席に戻りしばらくすると、瑞花がわたしの前の席に座った。


「おはよう緋莉ぃ、体は大丈夫?」

「瑞花、昨日はありがとう。すっかり良くなったとは言えないけど、今日は落ち着いてるよ」

「そうだろうねえ、朝から浅桜くんとあれだけ見せつけてくれたんだから、具合も良くなってくれてないと困るよ」


 ふふっと笑い意地悪な目をした瑞花はなにかを察しているのだろう。今すぐ話せと言わんばかりだ。


「もしかしてあの後、浅桜くんとうまくいったの?」


 それもこれも、瑞花のおかげでもある。だからではないけれど、瑞花には一番に知らせたかった。


「えっと、あの、おかげで浅桜くんと……ううん、優陽と付き合うことになっちゃった」


 口に出すと余計に恥ずかしくて、語尾が霞むように小さくなった。

 瑞花が急に立ち上がり、わたしの両手を掴む。


「やったね! おめでとう緋莉!」


 こ、声が大きい! まるで教室中に響くような大声。

 優陽が机に両肘を付いて、頭を抱えているのが見えた。心の中でごめんねと呟くが、わたしはどこか浮かれてもいる。何度も泣きそうな声で「おめでとう」と言ってくれる瑞花に、わたしも何度も「ありがとう」と返した。