「いや、頸動脈とはいえ、針のような小さな傷口で亡くなるまで血が止まらないなんて不思議だなって思って」


 吸血鬼の仕業を疑っている、なんて言えるわけがない。


「へえ、よく気がついたね。確かにお医者さんが緊急時に動脈採血することもあるけど、圧迫止血で対処できるし、そんなに小さい傷が原因で次々と人が亡くなるなんておかしいよね。ってことは全く身動きが取れない状態にされていたか血液凝固障害が起きたのかもしれないけど、それも不可解ではあるかな」


 さすが養護教諭だ。わたし達の噂話とはレベルが違う。


「でも、どうしてそんなことが気になるの? 立華さん医療に興味あるの?」

「べ、別にそういうわけじゃないけど……」


 これ以上聞くのは、まずいかな。


「ありがとう、先生。またなにか気づいたことがあったら教えてね」

「え? ちょっ……立華さん!」


 なにか詮索されそうな予感がしたわたしは、慌てて保健室をあとにした。