釈然としないけれど、お母さんが大丈夫と言うのだから心配ないのだろうか。
わたしはお母さんを尊敬しているし、信用も信頼もしている。お母さんが言うことに今まで間違いなんてなかった。
「うん……わかった。今日は心配かけてごめんね」
「お母さんこそ、もっと早くに話しておけばよかったわね。ごめんなさい」
「ううん、大丈夫。じゃあ、お風呂入ってくるね」
二階の自分の部屋へ入ると、鞄を開けてふたつ目のオペラを手に取った。浅桜くんに渡したほうはあまり崩れていなかったけれど、こっちは完全にへこんだあとがある。
封を解いて箱を開けると、案の定中身はぐしゃぐしゃに潰れていて、到底食べられそうにない。浴室へ行く途中キッチンへ寄って心の中でごめんなさいと呟くと、お母さんに気づかれないようにそっとゴミ箱へ入れた。
結局ルカさんには渡せなかったけれど、きっとこれで良かったのだろう。そう自分に言い聞かせて、今日一日の出来事を振り返りながら、血のように生ぬるく心地よいお湯をわたしは浴び続けた。