「ありがとう」


 耳に吐息がかかる。


「俺は立華が好きだよ」


 ――えっ?

 うそ……。今、なんて……?


 突然の告白。もちろん心の準備なんてできていない。喉の奥から心臓がせりあがりそうなくらい、心拍が早鐘を打ち始める。


「え? あの、えっと……、本気……ですか?」


 頭が混乱している。とりあえずお礼……いや違う。じゃあ返事……でも、バレンタインだから本来わたしから告白するべきだったんじゃ……。ああ、もう、どうしたらいいの?


「冗談でこんなこと言わないって」


 わたしを抱きしめる力が強くなる。

 温かくて、うれしくて、それからとても愛おしくなって、わたしも浅桜くんを強く抱きしめ返した。

 そして、自然にその言葉が漏れる。


「ごめんなさい。わたしも……好き、です」


 浅桜くんと、両思い。そう思うだけで胸に幸せな痛みが走り抜ける。


「ごめんなさいって、一瞬振られたかと思った」


 あぁ、そうか。先に謝っちゃだめだ。


「ご、ごめん、でも……好き」


 また、謝ってしまった。

 浅桜くんの腕の中で、色とりどりの感情が芽生えていく。

 片想いだった頃は毎日切なくて、息苦しくて、忘れたいくらい胸が痛くて……。けれど今、心には別の温かな想いが生まれていた。

 これがなんなのか、わたしにはまだ分からない。でもこの気持ちをこれからもずっと忘れずにいたいと思う。