――あ、あれっ……?
気がつくと、目の前にいくつものバラが咲き誇っていた。
――ここは、どこだろう……?
見覚えのある景色に、首を振って辺りを見渡す。
――ここって、もしかして……わたしの家、だよね?
わたしは自宅のエントランスに立っていた。
カバンもスノードームもちゃんと持っている。お気に入りのコートが少し汚れているけれど、どこかに痛みがあるわけでもない。
いつの間に帰ってきたのだろうか。記憶がすっぽり抜け落ちている。
あれからどうなったんだろう。
記憶が定かじゃない分余計気になるけれど、確かめに行く勇気なんてもちろん持ち合わせていない。
助けてくれた銀髪男性の安否だって気がかりだ。でも、今は公園に足を踏み入れたくない。
悶々とする頭を抱えたまま自宅の門と玄関ポーチの往復を繰り返す。
だけど銀髪男性への心配やどうやって帰ってきたのかという疑問より、恐ろしい男達に囲まれた恐怖のほうが上回っている。
助けてもらってお礼も言えなかったもどかしさや、疑念と不安を抱えたまま玄関ポーチで足を止めると、カバンから鍵を取り出した。
……わたしは、弱虫だ。