「ルカさん、蓮崎くんになにをしたの? ちゃんと息はあるの?」
まるでルカさんが殺人犯だと疑うような質問に抵抗はあったが、浅桜くんの言うとおり、今は蓮崎くんの無事を確認して病院に行くのが最優先だ。
「記憶を消すために眠らせただけだ。じきに目を覚ます」
記憶を消す? 眠らせた? あの僅かな時間で一体どうやって……?
ルカさんの言葉に理解が追いつかないうちに、蓮崎くんの体がビクビクと痙攣し始めた。
「おい! ほんとに大丈夫なのか?」
浅桜くんが声をあげる。
「黙って見ていろ」
その言葉どおりふたりで状況を見守っていると、すぐに痙攣は収まり、蓮崎くんはゆっくりと立ち上がった。
「れ、蓮崎、大丈夫か?」
しかし、蓮崎くんは声をかける浅桜くんに見向きもせず、そのままわたし達に背を向けて夜の闇へと歩き始める。
「お、おい!」
浅桜くんの声などまったく耳に届いていないかのように、蓮崎くんは静かにこの場を離れていく。
確かに生きてはいるけれど生気がまったく感じられない。状況の確認もせず、まるで操られた人形のような動作で立ち去っていく蓮崎くんの背を、わたし達は固唾を飲んで見送っていた。