しかし、ルカさんは蓮崎くんに覆い被さったまま顔をあげようとはしない。そのうちに蓮崎くんの瞳から、徐々に光が失われていく。
「ルカ……さん?」
一体なにをしているのだろう?
ルカさんがゆっくりと蓮崎くんから離れた。どさりと音がして蓮崎くんの体が横たわる。その顔はまるで死体のように青白く、首筋には小さな針が刺さったようなふたつの傷がついていた。
「あんた、以前店に来た人じゃないか! 蓮崎になにをしたんだ!」
ルカさんが静かに顔を上げると、その唇の端から血が滴り落ちているのが見えた。
「ルカ……さん。一体、なにを……?」
浅桜くんからの視線を感じる。この人がルカさんだということに、もしくはわたしがルカさんと知り合いだということに驚いているのかもしれない。だけど今わたしはルカさんの異様な姿から目を逸らすことができない。
ルカさんがわたしへ向かい手を伸ばし歩き始める。すると、浅桜くんがわたしを庇うようにして、ルカさんの前に立ち塞がった。
「答えろ! 蓮崎になにをしたんだ?」
ルカさんは伸ばしていた腕をゆっくりと下ろしてから静かに口を開くと、信じられない言葉を口にした。
「……俺は、吸血鬼だ」