「浅桜っ! その化け物から離れろ!」


 ――ばけ……もの……?


 その声にはっとして目を開けると、浅桜くんの困ったような顔が意識の奥に飛び込んできた。


「ご、ごめんなさい! わたし一体……」


 なにをしようとしていたんだろう。もしかしてキス? しかもわたしから? そんな馬鹿な。


「立……華、その瞳……」


 ――まさか!


 慌てて浅桜くんから離れる。


「浅桜、早く逃げろ! お前も殺されるぞ!」


 そう言ってわたしを指さしているのは、もしかして……蓮崎くん? どうしてここに?


「俺は見たんだ! クリスマス会のあと、バイト先の子に呼び出されてこの公園に来たらそいつが……うっ!」


 急に蓮崎くんの言葉が途切れ、その首がおかしな角度に曲がる。それを見て思わず叫び声をあげそうになった。けれど、その首筋に見えていたのは、見覚えのある銀色の髪。


「ま、まさか、あんたは!」


 浅桜くんが戸惑うような声をあげた。

 蓮崎くんの首筋で顔を伏せているのは、紛れもなくルカさんだった。