意識が朦朧としてくるのに相反して、浅桜くんの匂いはさらに強くなっていく。こんなときなのに指先から身体中が徐々に熱くなってきて、甘く官能的な感覚が全身を駆け巡ると、思わずその首に両腕を回した。
「お、おい、どうした? 立華」
どうもしないよ。ただ、浅桜くんが欲しいだけ……。
顔を赤くして慌てている浅桜くん。なぜこんなことをしているのか、自分でもよくわからない。けれど、彼を独り占めしたい。わたしのものにしてしまいたい。
顔をあげて、浅桜くんを見つめる。
頭がくらくらする。喉が乾いた。熱が体から出たがっている。浅桜くんの体内から滲み出るその香りが、わたしの心を支配する。
もう、なるようになればいい。浅桜くんなら、きっとわたしを受け入れてくれるだろう。
徐々に落ちてくる重い瞼を閉じて、唇を浅桜くんへと近づけていく。
そして、口を小さく開いて浅桜くんに触れようとした瞬間――。