なるべくひと気のない場所を選びながら、校舎の中をあてもなく歩き回る。

 なぜ本城先輩……いや蓮崎くんは、わたしがクリスマス会の日に緑地公園にいたことを知っていたのだろう。

 瑞花には内緒にしてと言っておいた。事情を知っている皆渡くんも瑞花が口止めしてくれているはずだ。あのとき被害に遭った蜂屋すみれさんって人と蓮崎くん達が関係してるのかもしれないけれど、蓮崎くんとも本城先輩とも、正直もう関わりたくはない。

 しばらく校内を彷徨い、屋上へ足を向けた。寒いけれど、だからこそ誰も居ない場所。

 フェンスに手をかけて、校庭でボールを追いかける生徒達を見下ろしていると、まるでわたしだけが誰も知らない別の世界にいる。そんなふうに思えて居心地がよかった。

 ここから見える生徒達の中にも、きっとわたしの噂を聞いた人がいるだろう。同時にわたしがあの事件に少なからず関わっているという噂も広まっているかもしれない。そう考えると、人と会うのが怖い。事情を訊かれるのが怖い。


「誰か、助けて……」


 わたしは誰に見られることなく、ひとり膝を抱えて涙を流した。