「いやああああああああっ!」
白いカーテンに囲まれた小さな空間に響いたのは、わたしの悲鳴だった。
「ゆ……ゆめ?」
だとしたら、やけにリアルな夢だった。出てきたのは、紛れもなく去年のクリスマスイブに殺された四人の男達。それに同じ日に犠牲になった蜂屋すみれさんという会ったこともない女の子。そして、その五人を殺したのは……。
「わ、わたし?」
息が苦しい。心臓がうるさいくらいに高鳴っていて、まるで身体中の血が沸騰しそうなほど熱くなっているみたいだ。
薄いカーテンがシャッと音を立てて開き、白衣を着た女性が顔を覗かせた。
「立華さん、大丈夫? 怖い夢でも見たの?」
「き、菊川先生……? は、はい、大丈夫です」
声をかけてくれたのは養護教諭の菊川先生だった。ということは、ここは保健室だ。
菊川先生はうちの学校の先生の中で一番若くて、年齢は二十四歳。昼休みにわざわざ菊川先生とお喋りしに保健室へ行くという生徒がいるくらい話し易くて慕われている。わたしも一度生理痛がひどいときにお世話になったことがあり、それ以来廊下ですれ違うと言葉を交わすようになっていた。