一瞬不審に思ったけれど、気にしないよう努めて踊り場まで進む。すると、わたしの顔を見たひとりの女子生徒がわたしの行く手を遮ってきた。
「ちょっと止まって」
戸惑ったのも束の間、知らない女子生徒達がわたしを取り囲む。
「あなたが立華緋莉……だよね?」
いきなりつっけんどんな態度で名前を呼ばれて少しむっとしたが、青いリボンであるところを見ると、この人達は上級生だ。
わたし達一年生は少し地味な緑のリボン。三年生は赤いリボンで一番かわいい。学年とかどうでもいいから赤に統一してほしいと常々思っていたけれど、今はリボンで判別出来てよかった……とか、そんなことを考えている場合ではない。
「そうですけど、わたしになにか御用ですか?」
表情を見られないように、わたしは少し俯き気味に訊ねた。
「胡桃ー! 立華さんきたよ!」
わたしの質問を無視するかのように、踊り場から二階へ声を張り上げる知らない上級生。すると、階段から見覚えのある女の子が、「はーい」と妙に高い声で返事をしながら下りてきた。
「久しぶり、緋莉ちゃん」
アミューズメントパークで蓮崎くんと一緒だった本城先輩だ。この場の空気に似合わない笑みを携えて、わたしにひらひらと手を振っている。