宵月家からの帰り道、オペラを抱えたわたしは緑地公園の前で足を止めた。


「……ちゃんと渡せるかな?」


 誰もいない景色に溶け込みながら、穏やかな夕暮れに浅桜くんの顔を思い浮かべた。その反対にはおぼろげな月が浮かんでいる。そこになぜか、ふとルカさんの面影が重なった。

 夕空を月が紫に染め上げていく。

 まだ薄暗い空に瞬く星を、わたしはひとりで辺りが暗くなるまで眺めていた。

 明日はいよいよバレンタインだ。