首を傾げつつベッドから抜け出して扉の前まで行くと、ふとウォールミラーに映る自分自身と目が合って思わず「ひっ」と悲鳴をあげた。


 ――な、なんなの、これ?


 闇の中でふたつの目が妖しく紅く輝いている。一瞬他に誰かいるのかと疑ったが、間違いなくわたし自身の目だ。その紅い瞳がわたしをじっと見つめている。


 ――わたしの()、どうなってるの?


 目が痛むわけでも視界が霞むわけでもない。だけどどこかで見覚えがある瞳だ。


 ――まさか、この瞳の色、ルカさんと同じ……?


 その場にへたり込むと、しりもちをついたまま手を伸ばし照明のスイッチを入れた。パッと部屋が明るくなると、鏡の中のわたしの瞳はいつもの薄い茶色へと戻っていた。