しかし銀髪男性とわたしが目を合わせた次の瞬間、わたしに絡んできた男達が一斉に彼に飛びかかっていた。中には金属バットを振り上げている男までいる。


「危ない!」


 咄嗟に叫んだが、ゴキッという鈍い音が数回辺りに響く。


「今のうちに行け! 早くここを離れろ!」


 倒れながらも声をあげる銀髪男性。

 男達は容赦なく彼を蹴りつけて、金属バットが何度も振り下ろされる。


「で、でも……っ!」


 倒れたままの銀髪男性を執拗に殴りつける男達。暴行を楽しむような表情。

 ほんとうに同じ人間なのだろうか。もはや狂っているとしか思えない。悪い人どころではない。こいつらはきっと悪魔だ。


「や、やめてください!」


 なんとかしなくちゃ。このままじゃこの人が殺されてしまう。
 けれどあまりに恐ろしい光景に思考が停止してしまい、声も出せない。

 なにもできないまま立ち尽くしていると、しばらくして暴行がやんだ。


「かっこつけ野郎が、粋がってんじゃねえよ」


 血のついた金属バットが月明りに浮かぶ。

 あれだけの暴行を受けて、彼は生きていられるのだろうか? この人達は、こんなにも簡単に人の命を奪えるのだろうか?


「おい、この女どうする?」

「騒いじまったからな。とりあえず車に積んじまうか」


 男達がにたにたと不気味な笑みを浮かべて近づいてくる。


「いやだ……やめて……」


 警察に通報? ううん、救急車? とにかく、助けを呼ばなくちゃ。


 でも今スマホを取り出してどこかに連絡しようとしたら、この男達はわたしになにをしてくるのだろう。

 すぐそこに待つ惨劇を想像すると、体が震えて力が入らない。