お店を出ると、冬の澄んだ青空と共に暖かな太陽が姿を見せていて、みんなで緑地公園へ向かうことになった。

 少しだけ戸惑ったけれど、以前瑞花も言ってくれたように、事件についてはわたしに直接の関係はない。それよりも一瞬ルカさんの顔が頭をよぎってしまったことのほうが今のわたしには大問題のように思える。

 緑地公園は週末ということもあり、たくさんの人で賑わっていた。外は寒いけれど、笑い声が飛び交う園内は暖かな雰囲気に包まれている。

 アイスを食べたりバラ園や湖の周りを散策していると、時間はあっという間に過ぎていき、キッチンカーで温かいスープを買って簡易テーブルについた頃には、辺りは次第に夕闇に包まれ始めていた。


「それじゃあ、俺らそろそろ帰るわ」


 スープを飲み終え、皆渡くんと瑞花が肩を並べて立ち上がる。


「立華、家まで送るよ」


 浅桜くんの笑顔が夕日に映える。一瞬見惚れてしまったその姿がとても美しくて言葉にならない。そんな彼の優しさに、わたしは嘘をついて返した。


「……ありがとう。うれしいけど、このあとお母さんと待ち合わせして夕食の買い物をして帰るの。だから、大丈夫だよ」


 本当は約束なんてしていないし、嘘をつくことに罪悪感はある。だけど、午後からずっと体調が優れずにいるわたしと今ふたりきりになったら、浅桜くんをいやな気分にさせてしまうかもしれない。

 正直に伝えることばかりが良いことだとは限らない。誰かのために真実を隠し、嘘をつく。幸せのために使い分ける嘘と真実。それは優しさと表裏一体なのだと、わたしは思う。


「そっか。じゃあ俺も真っ直ぐ帰るよ。またメッセージ送るから」

「……うん、待ってるね」


 次を期待させてくれる言葉。これだけで、心の中が幸福感で満たされる。


「それじゃまたね、緋莉」


 瑞花がそう言って手を振ると、三人は肩を並べて駅の方角へと歩き始める。その背をしばらく見送ると、わたしも踵を返して自宅へと歩き始めた。

 ふと空を見上げると、冬の夕空は徐々に星空へと姿を変えていた。


 家に帰ると気が抜けたのか虚脱感と疲労感がさらに重くのしかかり、夕食を済ませてお風呂に入ると、早目にベッドに潜り込んで休んだ。