「浅桜くん大丈夫? お店潰れちゃったりしない?」
瑞花が遠慮気味に不躾な質問をすると、浅桜くん親子が可笑しそうに声をあげて笑った。その表情もまたそっくりだ。
「心配してくれてありがとう。気になるなら、二十歳を過ぎたら今度はお酒を飲みにおいで。ちゃんと店は開けておくさ」
それを聞いた瑞花が「ぜひ!」と元気に返事をする。
そして、浅桜くんのお父さんはなにかを思い出したように、「あぁ、そういえば……」とわたしを見て言葉を続けた。
「きみにお兄さんはいるかい?」
「いえ、わたしはひとりっ子ですけど……」
「そうか。最近バーへ飲みに来るようになったお客さんがいるんだが、君と雰囲気がよく似ていてね。てっきり血縁者かと思ったんだけど、まあよく考えれば彼は日本人じゃなかったな。勘違いしてごめんよ」
兄がいるのかって聞くということは男性なのだろう。女性じゃないことが少々引っかかるけれど、こんなお洒落なお店に足を運ぶような人なのだから、きっと素敵な人に違いない。うっかり『ありがとうございます』と言ってしまいそうになったところを、頭の痛みも相まって、コミュ障のように「どうも」とだけ返した。