「ほんと、うまかったな!」

「浅桜くんありがとう。また寄らせてもらってもいい?」


 皆渡くんも瑞花もさぞ満足と言った顔だ。一方わたしの頭痛はまだ続いていて、うまく笑うことができない。


「それじゃ、そろそろ行こうか。父さん、未来のお客さんを連れてきたんだ。サービスしてくれよ」


 浅桜くんが立ち上がり、レジへと向かう。ちらりとメニュー表に目をやると、ランチセットはドリンク付きで千五百円と表記されていた。


「あぁ、ひとり五百円で構わないよ。あとはお前の給料から引いておくさ」

「ありがとう、父さん」


 浅桜くんがくすりと笑い、財布から二千円を取り出してレジに入れた。


「そんなにまけてもらっていいんですか?」


 皆渡くんは財布を片手に目を丸くしている。


「友達の家でご馳走になったからといってお金を払うなんてしないだろう? だけど無料にすると君らも気を遣うだろうから、ワンコインだけ頂くよ」

 浅桜くんのお父さんが少しだけ目尻を下げる。その少し笑った顔が浅桜くんにそっくりで、あぁ、親子なんだな、と思う。親子だとやっぱり、似てるんだなって。