しかし、待ちきれないとばかりに歩き始めたところで、


「また会ったねー」


 その声に、浅桜くんが足を止めた。
 さっきの人だ。名前は確か、本城胡桃さん。そして隣で一緒に居る男の子は――。


「れ、蓮崎くん?」


 数日前までわたしに何度もメッセージを送ってきた蓮崎くんが、バスケ部マネージャーの本城胡桃さんと一緒にいる。一体どうして?


「……立華」


 眉間にしわを寄せる蓮崎くんの表情は、たった今アミューズメント施設から出てきたとは思えないくらい険しくて、どこか不穏だ。


「あ、さっきはごめんねー。デリカシーなくって。あなたが立華緋莉ちゃん、だよね?」


 そんな空気をまるで気にしていないかの様な本城先輩。心なしか声色がさっきより尖っているように感じるのはわたしの勘違いだろうか。


「はい。あ、いえ……別に」


 素っ気なくして立ち去ったことを謝りたいけど、今わたしの頭は絶賛大混乱中だ。


「ほら、(かなめ)! 邪魔しちゃ悪いし、うちらも行こ!」


 そう言って蓮崎くんの手を引き、わたし達の横を素通りしようとする本城先輩にちらりと目をくべると、すれ違う瞬間、彼女の冷ややかな視線が突き刺ささった気がした。