みんなが息を呑んで浅桜くんの放った矢の先を見つめる。


「は? お前うますぎんだけど」


 一瞬の張り詰めた静寂は、皆渡くんの間の抜けた声がやわらげた。

 これと同じようになんて、なにをどうすればいいんだろう。ただ腕を振ればダーツがテレポートするのだろうか。


「これも例のお客さんのおかげさ」

「ビリヤードとダーツのハイブリッドなんて、ハイスペックなお客さんだな」


 と、皆渡くんが笑う。


「じゃあ次は立華の番だな。投げやすいダーツだから、これなら立華もボードに当てることができるよ」

「う、うん、やってみるね」


 スローラインに立って、教わったように矢を構えた。

 ちゃんと届くかな? 届いてもうまくボードに刺さってくれるかな? かっこ悪いところを見られたくない。

 二、三度ストロークしてから矢を放つ瞬間。


「あれ? 優陽じゃん!」


 耳に届いたのは、知らない女の子の声。
 誰? 呼ばれているのは、浅桜くん?


「本城《ほんじょう》先輩。偶然ですね」


 わたしの手から離れた矢は、ボードまで半分を過ぎたところで乾いた音を立てて床に落ちた。