こんなのでいいのかどうかもわからないままキューを勢いよく押し出す。こつんという微妙な音とともに撞かれた白球が前方に転がり、整列した九つの球に軽く当たるとその菱形を柔らかく崩して静かに止まった。


「上出来だよ。あとは習うより慣れろ、だな。じゃあ次は俺の番だけど、こんな感じで打つんだよ」


 わたしが撞いた白球をもう一度浅桜くんが撞いた。かこんと軽快な音が数度響くと、数字の一が書かれた球が隅のポケットに吸い込まれていく。

 浅桜くんのショットに見惚れていると、隣の台でプレイしていた瑞花が両手を軽くぱちぱちと叩いた。皆渡くんも唖然としながら「すげえ……」と呟いている。

 浅桜くん、ビリヤード上手なんだな。やっぱり、かっこいいな……。

 その後も浅桜くんに教えてもらいながら、たどたどしくも次々と球をポケットへ落とすことができた。

 最初は緊張したし難しそうだなって躊躇ったけれど、今はとても楽しい。浅桜くんに教えてもらえたのだから、尚のこと幸せな時間だった。