男子ふたりが話し続けている間に瑞花がそっと近づいてくると、くっくと笑ってわたしにそっと耳打ちをした。
「よかったね。緋莉は特別なんだって」
ぼんっと音を立てたかのように、また顔が熱くなる。
瑞花になにか言い返そうとしたが、わたしの口は陸に打ち上げられた魚のようにぱくぱくするだけで、そこに声が乗ることはなかった。
「じゃあ、やっぱりまずはここから行くか」
しばらく歩いてから皆渡くんがそう言って見上げたのは、冬咲市の誰もがオープンを心待ちにしていた大きなアミューズメント施設。
定番のカラオケにボーリング、それにダーツにビリヤードから飲食スペースまであり、オープン以来いつも多くの人で賑わっているらしい。
そしてここには各々の規模は小さくなるけれど、多数のアトラクションを一定時間自由に遊べるフロアもある。皆渡くんの目当てはそれだ。わたしも密かに心が踊っている。
受付を済ませてエレベーターでフロアへと移動すると、大きな音と共にたくさんのアトラクションで賑わう空間が広がっていた。子どもから大人まで誰もが夢中になっていて、ここにいるだけでわくわくしてくる。
都会の大きな店舗では入場制限がかかることもあるらしいけれど、ここは混雑することもなさそうだ。これが片田舎である冬咲市のいいところかもしれない。