想像よりも重い展開につい読みふけってしまった。

 罪を背負って孤独に生きたバンパイアの想いに、切なさが残る。ラストを読者の想像に任せる手法も好きだ。

 最後に扉を開けたのは誰だったんだろう? 討伐隊が来た可能性もあるだろうけれど、この場合は指輪に刻まれた文字をヒントに踊り子がバンパイアの所在を知ったと考えていいのかな。バンパイアは息絶えていて、踊り子は彼が落とした指輪をただ大切に持っていただけというのも否定できない。

 指輪に刻まれた文字というのをもう少し詳しく書いて欲しかったなと思ったが、無料で読める物語にそこまで期待するのも変な話だ。

 きっと扉を開けたのは踊り子で、バンパイアは人間に戻って、ふたりは結ばれたのだろう。バラを咥えた猫が助けられた猫だったなら尚のこと素敵だなと思う。

 もどかしい余韻に浸りながらふうっと息を吐いて、ステーションクロックを確認する。針は九時五十分を指していた。そのまま駅の出入口に目をやると、瑞花と皆渡くんの姿が見えた。


「お待たせ。緋莉早いねー」

「ふたりともおはよう。浅桜くんはまだみたいだね」

「じゃあ、連絡してみるか?」


 皆渡くんがそう言ってスマホを取り出す。しかし、それをすぐに瑞花が止めた。


「まだ十分前でしょ? 急かさなくていいって」


 やっぱりさっき連絡しなくて良かったなと、こっそり胸を撫で下ろす。