自分の犯してきた過ちを後悔したバンパイアは、罪を懺悔し、踊り子の姿を遠くから眺め続けた。
雨が降れば傘を置き、晴れた日には一輪の赤いバラを残し、踊り子の幸せを人知れず願い続けていた。
それと同時に、彼は自分の死に場所を求め始める。
そして、とある雨の午後……。
傘を差した踊り子が街を歩いていると、車道の真ん中に横たわった猫の死体を目に留める。
死んだ猫を哀れに思った踊り子が胸の前で十字を切ると、死体がもぞもぞと動いてみせた。
驚いた踊り子が目を凝らすと、猫の死体の下から小さな子猫が姿を現す。
急いで子猫の元へと駆け寄ろうとするが、そこに迫りゆくのは一台の大型バスだった。
踊り子は懸命に声を掛けた。しかし親猫の死体に寄り添う子猫は体を震わせたままそこから動かなかった。
大雨の中を走るバスは猫の存在に気づいていないらしく減速する様子はない。それを見て慌てた彼女は咄嗟に車道へと飛び出してしまう。
かろうじて子猫を捕まえたものの、目前に迫るバスのクラクションがけたたましく響いた。このままでは子猫と共にバスに跳ねられてしまう。
踊り子は固く目を瞑り神に祈った。するとバスが衝突する瞬間、彼女は誰かの腕に包み込まれる感覚を覚える。