はっとして被害者の母親らしき人のもとへと駆け寄る。がたがたと震える女性は目の焦点が合っておらず、涙をこぼして子どもの名前を何度も呟き、呻くように「助けて……」と声を漏らすばかりだ。そんな女性を慰めるように声を掛けたり背中をさすっている人もいた。

 ……わたしはなにを考えていたんだろう? 悲惨な事故を目の当たりにして、心がパニックを起こしたのだろうか。

 救急車が到着すると、隊員さんはすぐさま男の子の状態を確認してストレッチャーに乗せた。別の隊員さんは救護にあたっていた人達から話を聞いている。わたしも周りの人達と一緒に女性の肩に手を添えて救急車へついていくと、隊員さんへと女性を預けた。