住宅街に入ると、辺りの景色は家族で聖夜を祝うやわらかな民家の灯りへと変わる。
その先にあるのは、この小さな町には似つかわしくない大きな緑地公園。それを越えてさらに五分程並木道を進むと、わたしの家が見えてくる。
家まではこの緑地公園を大回りするよりも、北側の入口から入って南へと通り抜けたほうが早い。
普段の帰り道ではそうしているけれど、危ないから夜は通らないようにと言いつけられてもいた。
背の高い木々が周りを取り囲むように生えていて、外からはただの森にしか見えないし中は真っ暗だ。こんなところで危険な目に遭わないなんて言い切れない。
でも冬の夜は寒い。早く家に帰ってほっとしたい。この冷えた頬と耳をじわっと暖めてくれる暖房が恋しい。
――ピコン。
歩幅を狭めつつ暗い公園内の様子を伺っていると、ポケットの中でスマホの短い電子音が鳴った。
――誰からだろう?
足を止めてスマホを取り出し画面を確認すると、心に小さくて暖かい火が灯る。
『立華は二次会こないの?』
浅桜くんだ。
秋の体育祭で一緒に記録係をやった時にSNSのアカウントを交換した。
彼からメッセージが届くと、心拍数と体温がわずかながら上昇する。