「私を……狩りにきたの?」
そうだ、そうに違いない。寄って集って、化け物大事に来たんだ。
「なにを言うてるんや。そないなわけ、あらへんやろ」
「だって光明さん、言ってたよね? あやかしは滅するべきだって」
違う、最初はそうだったけど、光明さんは変わった。私がいちばん、それを知ってるはずなのに、どうして疑ってしまうんだろう。
「お前、様子変やで。なにがあったか、言うてみぃ」
嫌な態度をとっているのに、光明さんは不快な顔ひとつしない。ただ、心配してこちらに足を踏み出す。
でも、今の私にはこの場にいる人間全員が敵に思えてしまうのだ。
「──全員、動くな」
みんなの顔を見回し、目が合ったのを確認して魔性の瞳の力を使った。
ピキンッと甲高い音が鳴り、この場にいた人間たちは一瞬にして身体の自由を奪われる。
「これ、が……噂に聞く魔性の瞳の力……」
江永さんは狼狽えた様子で目を見張り、ゴクリと喉を上下させた。
でも所長さんは少しも狼狽えることなく、涼しい顔のままだ。
「自慢じゃないけどね、私を含め、ここにいる陰陽師は陰陽師の中でも群を抜いて優秀だ。そんな私たちの動きを一瞬で封じた彼女の力は……危険だ」
「危険?」
光明さんは眉の辺りに、不快感を漂わせる。
「それで、美鈴をどうしろと?」
「封印する」
「な……っ、それ美鈴に言うたんですか? 追い詰められて心が不安定になれば、力が暴走することは、所長かてわかっとったやろう!」
上司に向かって、声を荒げる光明さん。対する所長さんは、表情ひとつ動かない。
「きみの話では、呪約書には彼女を守ることと……なんだっけ? 添い寝をすることって書かれていたんだよね」
「そうですけど……」
「実にユーモアのある呪いだけどね、それを破ればきみは死ぬ。私は優秀な陰陽師を失うわけにはいかないからね、封印して眠らせて、きみのそばに置く。それで呪約書の項目を破ったことにはならない」
淡々と述べられ、光明さんが「なにを言うてるんですか……」と怒りに声を震わせた。
「寿命来るまで封印して、ずっと眠らせとく気ですか? そんなん、生きたまま死んでるようなものちゃいますか」
「私は陰陽寮の所長だ。危険は未然に防ぐ必要があるんだよ。私たちの選択ひとつで、大勢の人間が死ぬことになる。言い方は悪いけど、ひとりの犠牲で済むのなら、こうする他ないんだ」
「だからって──」
続けて言い募ろうとした彼を「光明」と、江永さんが諌める。
「所長の言っていることは正しい。万が一、彼女があやかし側について結託でもしたら、真っ先に狙われるのは人間だ。俺たち陰陽師は人間が平和に暮らすために、あやかしを狩ってきたんだからな」
「そもそも人間の平和のために、あやかしを狩るんはおかしい。人間の社会では窃盗をしたくらいじゃ死刑にはならへん。そやけど、あやかしに対しては窃盗も殺人も罪の重さがおんなじ扱いちゃうか。あやかしは、なにをしても殺される。あやかしであることそのものが罪みたいに」
光明さんの例えは実に的を得ていた。あやかしってだけで、討伐される理不尽な偏見と差別。あやかしの生きづらさが身に染みる。
そうだ、そうに違いない。寄って集って、化け物大事に来たんだ。
「なにを言うてるんや。そないなわけ、あらへんやろ」
「だって光明さん、言ってたよね? あやかしは滅するべきだって」
違う、最初はそうだったけど、光明さんは変わった。私がいちばん、それを知ってるはずなのに、どうして疑ってしまうんだろう。
「お前、様子変やで。なにがあったか、言うてみぃ」
嫌な態度をとっているのに、光明さんは不快な顔ひとつしない。ただ、心配してこちらに足を踏み出す。
でも、今の私にはこの場にいる人間全員が敵に思えてしまうのだ。
「──全員、動くな」
みんなの顔を見回し、目が合ったのを確認して魔性の瞳の力を使った。
ピキンッと甲高い音が鳴り、この場にいた人間たちは一瞬にして身体の自由を奪われる。
「これ、が……噂に聞く魔性の瞳の力……」
江永さんは狼狽えた様子で目を見張り、ゴクリと喉を上下させた。
でも所長さんは少しも狼狽えることなく、涼しい顔のままだ。
「自慢じゃないけどね、私を含め、ここにいる陰陽師は陰陽師の中でも群を抜いて優秀だ。そんな私たちの動きを一瞬で封じた彼女の力は……危険だ」
「危険?」
光明さんは眉の辺りに、不快感を漂わせる。
「それで、美鈴をどうしろと?」
「封印する」
「な……っ、それ美鈴に言うたんですか? 追い詰められて心が不安定になれば、力が暴走することは、所長かてわかっとったやろう!」
上司に向かって、声を荒げる光明さん。対する所長さんは、表情ひとつ動かない。
「きみの話では、呪約書には彼女を守ることと……なんだっけ? 添い寝をすることって書かれていたんだよね」
「そうですけど……」
「実にユーモアのある呪いだけどね、それを破ればきみは死ぬ。私は優秀な陰陽師を失うわけにはいかないからね、封印して眠らせて、きみのそばに置く。それで呪約書の項目を破ったことにはならない」
淡々と述べられ、光明さんが「なにを言うてるんですか……」と怒りに声を震わせた。
「寿命来るまで封印して、ずっと眠らせとく気ですか? そんなん、生きたまま死んでるようなものちゃいますか」
「私は陰陽寮の所長だ。危険は未然に防ぐ必要があるんだよ。私たちの選択ひとつで、大勢の人間が死ぬことになる。言い方は悪いけど、ひとりの犠牲で済むのなら、こうする他ないんだ」
「だからって──」
続けて言い募ろうとした彼を「光明」と、江永さんが諌める。
「所長の言っていることは正しい。万が一、彼女があやかし側について結託でもしたら、真っ先に狙われるのは人間だ。俺たち陰陽師は人間が平和に暮らすために、あやかしを狩ってきたんだからな」
「そもそも人間の平和のために、あやかしを狩るんはおかしい。人間の社会では窃盗をしたくらいじゃ死刑にはならへん。そやけど、あやかしに対しては窃盗も殺人も罪の重さがおんなじ扱いちゃうか。あやかしは、なにをしても殺される。あやかしであることそのものが罪みたいに」
光明さんの例えは実に的を得ていた。あやかしってだけで、討伐される理不尽な偏見と差別。あやかしの生きづらさが身に染みる。