「大好きですよ、光明さん」

 ぶっきらぼうながらも心配して励まそうとしてくれるところは可愛くて、言葉はきついけど嘘をつかないところが誠実で、ピンチのときは駆けつけてくれるスーパーマンみたいな人。

そばにいて安心するのは、きっと光明さんだけだ。

「んなっ……アホちゃうんか!」

 アホでもなんでもいい、私は……私は、光明さんが好きだ。

 気づいたばかりのこの気持ちを胸に秘めておくには活きがよすぎて、言わずにはいられなかった。

「照れてるんですか? 可愛いなあ~」

 後ろから光明さんの首に腕を回して、ぎゅうっと抱きつけば、「じゃれるな、この猫女!」と引き離そうとしてくる。

 私たちが騒いでいたからだろう、

「お嫁様、光明様……?」

 と、遠慮気味に襖が開けられた。躊躇いながら顔を出した水珠は、くっついている私と光明さんを交互に見て……。

「ごゆっくり……」

 赤面しながら襖を再び閉めようとした。

「ちょっと待て。水珠、お前なにか勘違いしてないか!」

 焦ったように閉まりかけている襖に向かって、光明さんが叫ぶ。

するとそこへ、「水珠、なにしてんだよ?」と訝しむ赤珠の声が。すぐにシュタンッと襖が開け放たれる。

「光明様、そろそろ朝食のお時間……」

 赤珠が元気よく言いかけたのだが、その口を水珠が後ろから塞ぎ、勢いよく襖を閉め直した。薄い襖の向こうから、ひそひそ話が聞こえてくる。

「人様の色恋に首を突っ込むと……馬に蹴られるんですよ、兄さん」

「色恋? ちょっと前まで、光明様にその気はなさそうだったじゃねえか!」

「兄さんは鈍いですね……どう見たって仲良しになっていたじゃありませんか」

「そうなのか!?」

 ふたりとも、筒抜けです……。

 なんとなく気まずい空気が室内に満ち、私はさりげなく光明さんから離れたのだった。