「光明様もお嫁様も……いつの間にか、仲良し……」

「水珠、お前の目は節穴か? こんなちんちくりん、光明様の隣に立ったら、光明様の神々しさに霞んで消えちまうだろ! 嫁になるには、もっと美人で器量よしで、とにかく光ってないとな!」

 ふんっと鼻を鳴らし、赤珠がふんぞり返る。

「ちょっと待って、最後のは私じゃなくてもクリアできないからいいとして……。残りは裏を返すと、私が不細工で不器用ってこと!?」

「お前、自分が美人だと思ってたのか? 自己評価高いやつだな!」

「赤珠……嫁いびりばっかりしてると、光明さんがいつまで経っても結婚できなくなるからね? どんなに愛があっても、嫁姑問題で離婚とか結構あるんだからね?」

 主のためを思うならば、嫁候補の基準をもっと下げてあげてください。

「なんやお前、俺と離婚する気なのか」

「光明さんまで、なに言ってるの……」

「俺から逃げられる思いなや」

「もうっ、少女漫画のヒーローか!」

 光明さんの胸をぽかっと叩く。

 変だ、身体がおかしい。光明さんの一言一句に心臓が反応して、呼吸が乱れた。ふわふわとしたこの気持ちが、どこかに着地することはあるのだろうか。

 産声をあげようとしている感情に、名前を付ける日が来たらいい。光明さんと言い合いながら、密かな願いを胸に秘めていると……。

 光明さんが思い出したように、「そや」と声をあげた。

「お前、今回は体調ええんやな。今まででいちばん力を解放したってのに、なんでそないにピンピンしてるんや?」

「そういえば……私、今回は全然怠くなかったんです。力を解放されたときは、身体中痛くてたまらなかったんだけど……今はむしろ力がわいてくる、みたいな?」
 
 力をコントロールできるようになってきたって、ことだろうか? そうすれば、もっと皆の役に立てるかもしれない。

「美鈴、もうその力は使うんちゃうぞ」

「え、どうして? この力があれば、光明さんの仕事に役立つのに……」

「ええから、使うんちゃう。力が身体に馴染み過ぎるのも、危険なんや。妖気に耐えられる身体になるってことは、あやかしに近づいてるってことなんやぞ」

「あやかしに……そんなまさか! 私があやかしに近づいてる? 人間のお腹の中から生まれてきたのに、ありえないって……」
 
 口では否定しながら、言葉尻は頼りなく萎む。

 あれだけの力を使って寝込まないなんて、私やっぱりおかしいのかも。

 自分が変わっていってしまうような漠然とした不安に、胸の前で握り合わせた手はどんどん冷たくなっていくのだった。