水森がどうして、営業とマーケの問題を調べているのか。
 俺にファイルを見せて、どうしたいのか。
 それが一番の気がかりだった。
 たった一人であの情報をかき集めていたのは、人には安易に話せない特別な理由があるはずだ。

 そう問い掛ければ、彼女は躊躇いがちに口を開いた。

「……たまに、ですが」
「うん」
「営業のやり方に、不信感を抱く時があります」
「……え」

 その発言に、多少なりとも驚く。
 俺自身はマーケの部署に不信を抱くようなことは一度も無かったし、気にすることもなかった。
 けれど彼女は、営業側に不信を買っていると言う。

 その発言の意味するところは。

「問題視する程のものではないんです。ただ、気になる事があって」
「うん」
「引き継いだ筈の情報のいくつかが『要らないもの』として認識されてしまったり、引き継いだ後の顧客状況が、マーケに伝わってこない時があって」
「……え、そんな事ってあるのか?」

 にわかには信じ難い話だった。

 何故ならマーケの役割は、『売れる仕組み』を考える事だからだ。商品開発に先立ち、情報収集に市場調査、顧客データの分析や解析など、社内ブレーンとして多様な役割を果たす機会が多い。
 だからマーケは営業に情報を引き継いだ後であっても、顧客の状況を把握しておかなければならない。その為には常日頃から、営業社員との情報交換が必要になる。