「あ、じゃあ、ご飯作るね」

「ああ、こっちだ」


 キッチンに案内されると瀬那の家の物と同じ国内メーカーの物で揃えられていたので使い方は心配なさそうだった。

 勝手に外国の高級メーカーを使っていそうなイメージをしていたので逆の意味で裏切られて助かった。

 だが、よくよく見てみれば納得だ。
 それらには全て一条院財閥のメーカーばかりだったからだ。

 そう言えば、備え付けのキッチンやコンロと言った家電から、マンション内にあるジムの器具まで目に付く物は一条院財閥の物だったなと思い出した。


 そんなことを考えていて手が止まっていた瀬那に枢が声を掛ける。


「何か問題でもあったか?」

「ううん、何でもない。ちょっと考え事してただけ」

「何を考えてたんだ?」

「うん、このマンションにあるのは一条院財閥が関わってる物が多いなって。それだけ」


 別にたいしたことではない。
 が、枢は納得したような顔をした。


「ここは一条院が建てたマンションだから、一条院で揃えられる物は全て一条院の物で揃えられている」

「そうなの?」

「ああ。俺がマンションの所有者だからな」

「えっ!?」


 これには瀬那も驚いた。


「祖父が誕生日に贈ってきた」


 枢はなんてことのないように言うが、とんでもない話だ。



「一条院半端ない……」


 こんな高級マンションをポンと贈るとは、瀬那の価値観では想像もできない。

 やっぱり住む世界が違う人なんだなと、瀬那は何だか心が沈んだ。


 一緒に昼ごはんを食べて、こうして話をして、普通に接しているが、本来なら瀬那の手の届かない人なのだ。


 勘違いするな。


 そう誰かに言われているような気がした。