引っ越し業者により順調に荷物は運び出され、なにもなくなりがらんとした室内を見回し感慨深くなった。



「瀬那悪い、急に呼び出された。
 荷物は運び込まれてるから、先に行っててくれ。これ新しい家の鍵」


 歩から鍵を受け取る。


「じゃあ、頼んだぞ」



 そう言うと、歩は足早に仕事へと向かっていった。


 残された瀬那は仕方がないと、一人で新しい家へと向うことにした。


 これから住むことになるマンションは、以前より学校に近くなる上、コンビニやスーパー、繁華街なども近く、生活の便がいい。

 高級感漂うエントランスを入り、エレベーターへと向かう。


 降りてくるエレベーターを静かに待ち、少しすると扉が開いた。


 乗り込もうとしたが、先に乗っていた人が降りてきた。
 その人の顔を見た瞬間、瀬那は動きを止めた。
 向こうも瀬那に気付き驚いたようにわずかに、本当に気づかないぐらいわずかに目を見開いた。


「い、一条院さん?」


 エレベーターから降りてきたのは枢だった。

 普段の制服とは違う、私服の枢。
 制服よりもより魅力的に大人っぽく枢を見せていた。


 かなり貴重な姿だろう。

 学校の女の子達が見たら発狂して騒ぐレベルだ。