「そんな高級マンション、お兄ちゃんお金大丈夫なの? それが原因で破産なんてしゃれにならないよ」
「お兄ちゃんを舐めるな妹よ。これでも結構稼いでいる。なんせ雑誌にも取り上げられる青年実業家様だぞ」
「大丈夫なら私に文句はないけど、明日引っ越しって急すぎる。
全然荷造りなんてしてないし」
「業者に任せれば良いさ。二人なんだしそれほど荷物も多くないだろ。
業者には連絡してあるから、明日決行だ」
はぁ、と瀬那は溜息を吐いた。
この家の家賃も払っているのは歩。
置いてもらっている瀬那に拒否権はないし、一度言いだしたら聞かない歩に何を言ったところで止められないだろう。
だとしても、相談ぐらいあっても良かったのではないかと思ってしまう。
諦めて、瀬那は明日に備えて早々に就寝することにした。
翌日、朝早くから引っ越し業者がやって来て、本当に引っ越しするか半信半疑だったのだが、兄の言葉が冗談ではなかったと分かった。