頬のほてりが治まり、ちらりと枢を見たが、なに事もなくサンドイッチを食している。


 他意はないのかもれないが、頬や髪に触れてくる最近の枢の行動に瀬名は翻弄されっぱなしだ。
 心臓がついてこない。


 枢はどういうつもりで触れてくるのか分からない。
 戸惑う瀬名を見て楽しんでいるのか、元々スキンシップが激しいのか。

 しかしそんな枢の行いよりも、それをさほど嫌がっていない自分に瀬名は戸惑いが隠せない。


 恥ずかしさはある。
 だが、触れてくる枢の手に嫌悪感はない。



 少し前まで言葉すら交わさなかったことが遠い日のことのように思う。
 

 何故こんなふうに食事を一緒に取るようになったのか、未だに分からない。


 だが、瀬名はなんだかんだでこの穏やかで静かな二人の時間を好ましく思っていた。




 昼食後、先に教室に戻った枢の後を追うように教室へ戻れば、なにやら騒然とした教室内の空気。



 そこには枢と、その前に土下座している三人の姿が。
 その三人は先程枢に瞬殺されたあの新入生を含む三人だった。



 彼らは、床に額を擦り付けながら大きな声で叫ぶ




「一条院さん、あなたの強さに惚れました!
 俺を弟子にして下さい! いや、下僕でもいいです!」

「いいです!」

「です!」




 
 一体あの後彼らに何があったのか。


 枢の顔が若干引きつっていたのは気のせいなのか、そうじゃないのか。


 

 なんにせよ、枢は男にも人気があるようだ。