登校してきた瀬那は、早速教室内を見回し美玲を探す。
既に来ていた美玲はすぐに見つかったが、何やら教室内がいつもより騒がしい気がした。
「おはよう、美玲」
「あっ、おはよう瀬那ちゃん」
「何かあったの? なんだかいつもより騒がしい気がするんだけど」
「大事件だよ、瀬那ちゃん。
新入生が、一条院様に喧嘩売ったらしいの」
耳を疑った。
朝から何の冗談かと思ったが、美玲の顔は真剣そのもの。
「自殺志願者?」
あの天下の一条院の御曹司である枢に喧嘩を売るなんて、そうとしか思えない。
これだけ噂になっているのだから実際に目にした者がいるのかもしれない。
「そう思うよね。
私もその現場は見てないんだけど、登校してきた一条院様に、新入生三人が、でかい顔をしてられるのは財閥の力があるおかげだ、お前の力じゃないとか、いい気になるなとか言って一条院様に文句付けたんだって」
「それでその三人どうなったの?
まさか海に沈められてないよね?」
「そのまま無視されたみたい」
「あまりの馬鹿さに相手もされなかったのね」
確かに枢はそういう面倒臭そうな者の相手はしたがらなさそうだと瀬那は納得。
「一条院様は相手にしなかっただけなんだろうけど、その一年生は一条院様が怖がって逃げたとか腰抜けとか言いふらしてるみたい」
馬鹿なのか、その新入生は。
いや、馬鹿だから一条院枢に喧嘩を売ったのだろう。
ここは進学校のはずなのに、そんな馬鹿が入れるとは朝から驚愕の連続だ。
「それかなりまずいんじゃあ。
一条院さんが何もしなくても、ノワールのメンバーがトップを馬鹿にされて黙ってると思えないけど」
「だよねぇ。本人達気付いてるのかいないのか。近いうちに痛い目見るだろうね」
ノワールのメンバーは一条院枢に心酔している者が多い。
その枢を馬鹿にされて黙っているはずがないのだ。
その一年生ただではすまないだろうと、クラスではその話題で持ちきりだった。