人垣を割ってぞろぞろと歩いてくる三人の男子生徒。



 誰もが彼らの姿を見ると廊下の端に寄り、彼らに道を開けていく。



「一条院様よ!」

「瑠衣様ー!」

「総司君格好いい!」




 きゃあきゃあと騒ぐ女子生徒達を意に介することなく……いや、若干うっとうしそうに歩いてくる三人。


 騒いでいる女子生徒達は騒ぐだけで、見えない壁があるかのように一定の距離以上近付こうとはしない。


 それは真ん中に立つ彼の持つ雰囲気のせいだろう。

 
 真ん中にいる彼に、この場が支配されていくのが分かる。



 漆黒の髪に漆黒の瞳。
 作られたような美しい端正な顔立ちは、一目で女性だけでなく男性までも見惚れてしまう。


 王者の如き雰囲気をまとう彼は、生まれながらの支配者だと思わせる、周囲を圧倒させる威圧感を持っていた。



 まだ高校生であるのにそんな雰囲気を持てるというのが凄いが、なんてことはない、彼の生まれを知れば。




 彼の名前は一条院 枢《かなめ》。
 日本の経済界を牛耳る影のドン、一条院宗太郎の孫で、一条院財閥の御曹司。


 経済界どころか、政財界にまで影響力を持っている一条院財閥。


 この町には一条院の本社があり、その関連企業も集まっている。

 この学校に通っている生徒のほとんどの親が、一条院の、もしくは一条院の子会社や関連企業で働いている。


 この学園も一条院が経営する学校で、先生ですら彼に文句は言えない。

 誰一人彼に口答えできない。


 ここで彼は支配者。
 まるで王のように扱われているのだ。