「えー! くじ引きー?」
「私、塾があるんですけど……」
だいちゃん先生のくじ引きという言葉に、皆嫌そうな顔をした。けれど先生は、「全員の事情なんて聞いてたら決まらないだろ」と一刀両断する。
「それに、大変な委員をみんなで支えるのがクラスだろ。塾があるやつが委員になったら、そいつが塾ある日は誰かが代わりにやるのが協力するってことだ。その為にまず代表の名前決めだ。自分が委員じゃなかったからって、何もしなくていいってことじゃないからな」
だいちゃん先生はみんなを念押しするように見て、「くじで決めるぞ」と、後ろのロッカーの上に置いてあるくじ引きの箱を取り出した。それは先週の席替えでも使ったくじ引き箱で、出席番号の入った紙が入っている。ダンボールを張り合わせ、真っ赤なテープでぐるぐる巻きにした先生手製のものだ。
「じゃあ、一人決めればいいだけだから先生が引くぞ」
そう言って、先生はぽんとくじ引きを引き抜いてしまう。もし真木くんが委員になってしまったらどうしようと、肝が冷える。委員会までは一緒にいれないし……。だんだん血の気が引いていくと、先生は「九番、園村」と、私に顔を向けた。
「え……」
私が文化祭員……?
このクラスは元々四十人クラス、戸塚さんが転校し、現在三十九人。まさか三十九分の一の確率を自分が引いてしまったことに驚いていると、隣の真木くんがつんつん私の肘をつついた。
「だいじょぶ。俺が手伝ってあげるから……」
「え、あ、ありがと……」
「園村かー! よろしくな!」
真木くんにお礼を言っていると、沖田くんが歯を見せて笑った。朝のホームルーム開始を報せる鐘が成り、クラスのみんなは自分ではなかったことにほっとした様子で自分の席についていく。
「園村、明日の朝さ、何の絵本で喫茶店するかの候補案出しの話しような!」
沖田くんは、私にそう言って教室の先頭、ど真ん中の席に座った。
文化祭委員……委員会で真木くんのそばを離れなきゃいけないことも出てきてしまうのだろうか……。
私はどことなく胸騒ぎを覚えながら、朝のホームルームが開始されていくのを眺めたのだった。