◇◇◇◇

 最終的に、水色の布と白い布でアリスの衣装がだいたい15人分と、テーブルクロスが8枚分、黒い布が約5メートルほど、他にもレースやつるつるしたレザー素材の布があって、衣装問題の予算は解決しそうだった。

 あとは早速縫製に移るわけだけど、クラスの衣装係のほかに、演劇部と交渉して、縫った衣装をそのまま譲渡という条件で、衣装を縫ってもらうことになっている。

 だから、これからははみんなで内装を作っていったり、当日の料理工程の説明メモを作ったり、学校でする作業が増えていくだろう。委員会の裏方の仕事もまだ残っているけど、自分が動かなきゃみんなの作業が一切できない! という状況を抜けたことで、まだ完成もしてないのに気が抜けてしまった。

 だから少し気が抜けた気持ちで家に帰り、夕食を食べてお風呂に入って、さて寝るかと部屋に戻ったとき、私のベッドで真木くんが体育座りをしているのを見たときは、素直に驚いた。

「真木くん……一緒に寝るのは、怖い夢見た時ならいいけど、最初からは駄目だよ……」

「今日見る……」

「まだ見てないよ。それに、怖い夢見るって最初から決めるのよくないよ? ほら、ベッド下りよ、ここで寝ちゃっても、お部屋運べないから……ね?」

 彼はむすっとした顔で、「むー……」と非難の眼差しを向けてきた。

「どうしたの?」

「おれ、めーちゃんに嫌われてるのかなって」

「嫌われてる? そんなことないよ? どうしてそう思うの?」

「だって……沖田が付き合うとかはないって言ってたとき、めーちゃん返事しなかった。俺、嫌われてる……めーちゃんに捨てられちゃうの……」

「ち、違うよ?」

「何が違うの……」

 拗ねた瞳の上目遣いは、どこか昏い。ダウナーな声色には、やや棘が混ざっているように感じた。