「わ、笑えないですよ先生……」
「そうか? すまん。先生文化祭だから浮かれてるのかもしれないな!」
「先生も、文化祭楽しみですか……?」
「当然だろ! 教え子の晴れ舞台だぞ? それにお前ら、なんだかんだで文化祭が一番やる気出すし」
確かに、体育祭とかは、あんまり好きじゃない。運動部の子たちも、体育祭より文化祭のほうが心なしかいきいきしていた気がする。
私は体育祭は真木くんが転がって大怪我しないか不安だったし、実際今年の体育祭、真木くんは高さ五センチの平均台から落下して、腕を打撲した。骨に異常は無かったけど、動かすと痛むらしく、彼は一か月くらいずっと包帯が手放せない状態だった。
「先生の学生時代って、文化祭どんな感じだったんですか……?」
「俺か? 俺……合唱コンクールで、ふざけて皆の笑い取ろうとしてたら女子泣かしたからな、話しづらいんだが……」
その言葉を聞いて、「ああ……」という気持ちになった。なんだか、先生は確かに明るくて溌溂としているけど、そんな感じの雰囲気が確かにある。
「やめろ、引くな園村! っていうか真木、お前寝てないか?」
真木くんに視線を向けると、彼は瞳を開いているもののうつらうつらしていた。お昼を食べ終わっているから、眠たいのだろう。五時間目は歴史の授業だし、眠ってしまうかもしれない。ノート、取っておいてあげないと……。
「ご、ごめんなさい先生、備品ありがとうございます! あ、あとで取りに戻ります!」
「おー、五時間目始まるまでの間、寝かせてやってくれ。鐘が鳴ったら起こすんだぞ?」
「はいっ! 失礼します!」
私は慌てて真木くんを引っ張り、美術室を後にする。彼は目をとろんとさせていて手のひらもじわじわ暖かくなってしまっていた。
「真木くん、大丈夫? 階段登れそう?」
「転がるほうがはやそう……」
「駄目だよ! 教室はこの上の上だよ!」