最初に事件が起きたのは、夏だ。ゴミ捨て場で、死体が見つかった。

 当初は、マナーのなっていないゴミと間違われ捨てられかけたところ、ゴミ収集の作業員さんが不審だと通報、遺体発見という流れになったようだった。遺体は百一歳のおじいさんで、百寿のお祝いの写真がニュースに出ていた。

 次に事件が起きたのはそれからまだ半月も経っていない頃。

 裏道で、八十歳のおじいさんの遺体が発見された。そして、そこからやや離れた住宅街で、会社員のおじさんが刺されているところが発見されたらしい。かなり不気味だ。

 現場は公園、裏道、住宅街と多岐にわたり、今なお犯人は見つかっていないという。

 被害者がみんな男性で、その年齢がどんどん下がっていくことから、浦島太郎の逆をいっているなんて、逆浦島殺人、乙姫の呪い殺人なんて名前をつけられ揶揄され、不謹慎だと炎上するニュースが起きるなど、ここ最近の話題はずっとそれだ。

 そんな事情からも、校内では来月の頭に開かれる文化祭と話題を二分している。

「怖いねぇめーちゃん。めーちゃん気をつけてね? 暗い暗いへ行っちゃったらやだよ……?」

 寝ぼけ眼の真木くんが、じっと私を見つめた。もちろん襲われたらとか、犯人と会ってしまったらどうしようという恐怖はあるけど、それより怖いのは真木くんが襲われることだ。

 その髪は肩にぎりぎりかかるほどの長さで、ただでさえぶかぶかなパーカーにより華奢な体型が強調され、背後からなら女の子にしか見えない。

 ターゲットがみんな男の人だから、女の子に見られて狙われないといい……。念の為防犯ブザーも持ってもらっているけれど、会わないのが一番だ。私は祈る気持ちで真木くんと一緒に教室へ入っていく。教室はもうすでにほとんどの生徒が登校してきていて、各々友達と雑談していた。真ん中では、男子の中心人物になっている沖田くんが、「やべーマジで文化祭どうしよ!」と焦り顔で頭を抱えていた。