「真っ黒の画面……点けようとしたけど充電なかったから……」
「ご、ごめん真木くん……、え、えっと、とりあえず見に行こう? いろいろ……。あとほら、帰りもプリン買ってあげるから、そんな顔しないで」
「プリン嫌い……」
「えぇ、真木くんプリン好きだよね?」
今日はお母さんが帰ってくる日だから、お茶菓子にクッキーを買って帰る予定だ。放置してしまったお詫びに同じ店のプリンを真木くんに買おうと思っていたけれど彼は首を横に振る。
「今日は嫌い……甘い匂い嫌い……甘いの嫌だ……通り魔もいるしまっすぐ帰る……お母さんへのお菓子なら、あっちの和菓子にして……」
真木くんは、ぐぐぐ、と力強く遠くの和菓子屋さんを指し示す。「お店調べてくれてた?」と問いかけると、「ずっと待ってたから……周り見てたの……」と、上目遣いで見つめてくる。突き刺さる非難の目が痛い……私は真木くんの視線にぐさぐさ刺されながら、その場を後にしたのだった。
◆◆◆
「んー! 今日はいっぱい買い物したねぇ真木くん」
「うん」
真木くんと一緒に、夕焼けの道を歩いていく。あれから和田さんに教えてもらった問屋さんに行ったり、ひとまず内装で絶対に必要なクロスを買っていたりしていたら、もう日が暮れてしまっていた。
真木くんの言う通り和菓子屋さんで買い物を済ませていてよかったかも知れない。お菓子屋さんに寄っていたら、きっとすっかり暗くなってしまっていただろうし……。真木くんのほうへ振り返ると、彼は両手にビニール袋を下げながら、またもや頭をふらふらさせて歩いていた。彼は「お荷物持つ係するね……」と、今日一日買ったものを持ってくれている。でも全部任せるのは流石に申し訳ないと半分こを申し出たけど、「お荷物持ち係もさせない……忘れられる……ひどい……」と言われてしまったため、お願いした。
「沖田くんに買ったもの報告しておこ……」