起きた時に真木くんが傍にいたこともあって、一緒に朝ごはんを食べて家を出た私たちは、学校から三駅ほど離れた歓楽街に来ていた。幸い天気は晴れで、真木くんの怖がる暗がりもない、お出かけ日和だ。
「おーでかけ……おーでかけ……」
真木くんは私の手を握りながら、ぼんやりとした足取りで休日に賑わう町並みを歩いている。今日の彼はパーカーにチェスターコートを羽織っていて、これでもかとマフラーをぐるぐる巻きにしていた。室内に入ったらマフラーをほどいてあげないと、きっと今度は体温調節ができなくなって風邪をひいてしまうだろう。
「そうだ、とりあえず確定で必要な小物の類は買っておこうか。ここ確か百円ショップあったよね」
「ん。この先だよ……」
真木くんが指差した方を見ると、たしかに百円ショップが並んでいた。その店は日用品や消耗品のオシャレで可愛いものを百円で! と比較的若年層を意識した品揃えで、クラスでリメイクとか雑貨好きな子がよく通っていると教えてもらったそこは、たしかにいつも行っている百円ショップよりも落ち着いた雰囲気で、色味も原色よりパステルカラーやダークカラーが多く感じる。
お店に入るとすぐハロウィンコーナーがあって、コウモリやかぼちゃ、魔女がデザインされている紙カップや、窓に貼るタイルシールなどが並んでいた。
「そっか、ハロウィンか……」
「おれの、誕生日もある……」
「それは来月ね? 真木くん11月が誕生日なんだよ?」
「そうだっけ……?」
真木くんはハロウィン仕様のスノードームを手に取りながら首をかしげる。彼と硝子の相性はあんまりよくないからひやひやする。私は絶対必要、と星のマークを書いたリストを確認して、フォークやスプーン、紙ナプキンやストロー、紙皿をかごにいれようとすると、かごがくいっと引っ張られた。
「俺、持ってあげる」
「いいの?」
「いいよ。むきむきだから……」
そう言って、彼が代わりにかごを持ってくれた。でも、真木くんはとても華奢で、肌もすべすべで白いから、むきむきというイメージはない。いつも寝癖があることさえ除けば、お姫様だ。思えば去年の文化祭で劇をやった時、彼を眠り姫にしようなんて男子が悪ふざけをする流れがあった。真木くんは暗いところが苦手だから彼を眠り姫にするのはやめてほしいとお願いして、事なきを得たけど……。