私は、このまま一生真木くんと一緒でいいけれど、彼はどうか分からない。私が幼馴染で、それで彼がたまたま私のことを信頼に値すると思っただけだし、私が一緒にいることで彼の人生の阻害になってるんじゃないかなと感じる時がある。真木くんの理解者が出来る機会を、私があれこれ傍にいて親しくすることで、奪っているんじゃないかと。

 文化祭だって、お化け屋敷をもっとちゃんとした友達と楽しめていたかも知れないし、普段、映画館に行くことだってしていたかもしれない。小学校の頃の真木くんの様子から考えると、あの事件さえなければ沖田くんのように、クラスの中心で活躍していただろう。文化祭や体育祭だって、きっと真木くんが中心になってクラスがまとまっていたはずだ。

「真木くん……こわいの、とんでけ……」

 起こさないよう、そっと彼の背中をさする。真木くんを誘拐した犯人は、十九歳の大学生。まだ未成年だった。もともと小さい子供に興味があって、魔が差したというのが犯人の言い分だった。そのわりにレンタカーで用もないのに小学校の周りを彷徨いたり、子供に声をかけたりしていたらしいのに少年法で守られていて、警察に逮捕されたものの処罰は普通の誘拐事件よりずっと軽く、刑務所ではなく更生施設に送られていた。

 今、彼がどうやって暮らしているか分からない。どんな顔かは覚えているから、見つけたら分かるけど、今どこで暮らしているかは全く分からなかった。それは襲われた被害者である真木くんも同じだ。どうやら犯人に対しても人権があって、被害者と言えどむやみに居場所を教える事はできないらしい。警察官の人に何度教えてくださいとお願いしても、断られていた。

 もう二度と、怖い目にあいたくない。本当は犯人の顔なんて見たくない。でも、犯人の居場所は教えてもらえないから、もし不意に同じ電車に乗ってても気づくことが出来ない。

 だから、私が真木くんを守らなきゃ。

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