そうして沖田くんの家に行ってから一週間が過ぎ、私はといえば、文化祭の予算に頭を悩ませていた。
「内装に一番予算割けないのに、一番予算かかりそうになってる……」
昼休み中の図書室で、私はスマホと予算とにらめっこをする。というのも、私はクラスで絵がうまい子たちに、内装や衣装についてどんなデザインがいいか案を考えて欲しいとお願いをしたからだ。
そうして上がったデザインは、不思議の国のアリスに出てくるハートの女王の城や、トランプ兵などを等身大のパネルにして飾ったり、テーブルに薔薇を置き、椅子もいつも皆の使っている椅子の背もたれにカバーをかけ、クッションを貼り付けソファにするなどとても素敵なものだったけれど、明らかに内装の予算が足りなくなるデザインだった。
でも、お願いした以上、「やっぱり全部直して」は申し訳なくて、なんとか出された案を実現できないか悩んでいる。
隣には真木くんもいて、おぼつかない手つきでインテリア雑誌を読み、一緒に考えてくれていた。沖田くんには文化祭のことは任せてと言ってしまったし、何とかしなきゃいけないけれど妙案が浮かばない。私は文化祭のいろいろをメモしているルーズリーフを取り出した。
「ねぇ真木くん、不思議の国のアリスなら、やっぱりケーキ必要だよね」
「ん」
「削ったら駄目だよね……」
喫茶店のメニュー候補は、チョコレートのトランプクッキーに、苺のケーキだ。ただ生の苺は高いから、いちごジャムで、ハートの女王がモチーフの赤いケーキにする予定だ。そして飲み物だけど、珈琲に紅茶、その二つが飲めない人向けにオレンジジュース、その他炭酸となると、結構大きな出費になってしまう。でもクッキーもケーキも、「出したい!」という声は多くて、出来れば叶えたいと昨夜はコストカットに取り組んでいたけど、まだまだ切り詰める必要がある。
クッキーを既製品のものにしてチョコペンでデコレーションするか、それともケーキにどこか改善点がないか、もういっそ飲み物全てを牛乳に揃えて、味付きの粉をかけるようにしてしまうか……なんて考えていると、真木くんが私の頬をつまんだ。柔らかい触り方だから特に痛みはないけれど、何がしたいのかがいまいち分からなくて、私は目を瞬いた。