「君の名前は?」

「興大……」

「興大くんか、お兄ちゃんお出かけしてる間、よく頑張ったね」

 今日来て良かったか。炊飯器はすごい熱を持っていたし、二人は怪我をするところだった。人の家に、勝手に上がり込んでしまった形だけど……。流しに目を向けると、ご飯はまっ黒焦げになっていて、食べられそうもない。

 真木くんとここで待ってもらって、コンビニで食べ物を買ってこようかと思うものの、ここに来るまでの間に見つけたお店は、駅に併設されている売店だけだった。

「お腹すいた……」

 人のおうちで勝手に料理するのも良くないけれど、ののかちゃんも興大くんも明らかにお腹をすかせ、お腹をさすっていたり、視線がぎこちない。「何を作ろうとしてたの?」と問いかけると「カレー」と短く答えた。

「そのカレーさ、お姉ちゃん手伝っちゃ駄目かな?」

「え……? い、いいの?」

「もちろんだよ。一緒につくろう! すぐ出来るからね!」

 安心してもらえるように言うと、彼らはやったあ! と顔を綻ばせた。

「真木くん、お願いがあるんだけど、ののかちゃんのこと見ててもらっていい?」

「いいよ……」

 真木くんは、のんびりした様子でののかちゃんの前にしゃがんだ。「よろしく……」とぼんやりした様子で声をかけている。ひとまず、ご飯はもうだめだから、二人分のカレーリゾットを作ろう。バイトをして学校に来ていないみたいだから、今日沖田くんに会えなかったらそれを報告しよう。

 私は腕まくりをしながら、興大くんと一緒に台所へ向かったのだった。