「沖田いなくなったと思ったら、今度はだいちゃんせんせーのところ行っちゃったから、寂しくなってついてきちゃった……」
「来るまで転んだりしてない……? スマホとお財布ちゃんと持ってる?」
真木くんと教室に向かって歩きながら、私は床や辺りを確認する。彼はよくものを落とすから、財布やスマホを落としてないか不安だ。
特に真木くんは、スマホをよく落とす。面倒臭がってSNSの類をやらず、電話のみに使っているためか、彼はスマホを「どうでもいいもの」「ポケットに入れていたら重い」と捉えているらしい。ぽんとそこらへんに置いてしまうし、私の部屋に置き去りになっていたことも一度や二度じゃない。さらに、私が言うまで持っていないことに気付かないから、必ず学校に行くときと帰るときにはお財布とスマホはちゃんと持っているかチェックしていた。
「うん。スマホもお財布もポケットにあるよ。それより何でめーちゃんだいちゃん先生のところになんて行っていたの?」
「沖田くん、ずっと休んでるでしょ? だから文化祭について聞きたかったのと、心配だから。あっ、あとそれと、今日帰り道沖田くんのおうちに寄ってもいいかな?」
「どうして?」
「沖田くん、あんまり連絡つかないんだって。それでだいちゃん先生に頼まれたんだ」
「えぇ……殺人鬼がうろうろしてるから、寄り道駄目って先生達皆言ってるのに?」
「うん。先生どうしても行けないらしくてさ」
正直、沖田くんのお兄さんが犯人とは、思いたくない。でもそれらしき人が逮捕されていて、暗くならないうちに帰ってこれれば大丈夫……という、安心感もあるのが複雑だ。
「駄目、かな?」
「俺もついていっていいならいーよ……一人で行くのはやだ。ただでさえ沖田のとこだし……」
じっとりと、不服そうな目で真木くんは見つめてきた。「俺のこと置いてったらやだよ」と、袖を握った。